9月24日

今日は、すこし気分を変えて姫路駅のすぐそばにあるビルの四階に入っているスタバに行ってみた。高いところから外の景色を見るのは、いつもは見ることのできない視点に立つことができるのが好きで、ぼーっとしながらずっと見てしまう。トンビなんかはこれくらいの高さにいつでも行けるんだなーと思う。

 

田島列島短編集 ごあいさつ』。長編の二つとはまた別の感じ。けれど、基本的に男女の恋愛がほとんどの作品でも扱われていて(例外は一つだけ)、この作者にとって恋愛はとても大きな問題なのだと思った。しかし、恋愛至上主義とは全く別の態度で、むしろこの作者の基調には反恋愛主義があり、にもかかわらず人間である限り、恋愛的なものに捉われざるを得ないそのことを書いているのだと、短編を読んで思った(『水は海に向かって流れる』でも、恋愛と反恋愛の感情は拮抗して描かれていた)。この作者がすごいのは、どの作品でも早急に簡単な解決に飛びつかず、その問題の揺らぎや持続を書くのがとても上手い点にあると思う。それによって、どの作品も一筋縄ではいかない複雑さがあるというか。

 

柴崎友香『その街の今は』を読んだ。柴崎友香の作品を最初から全部読んできて、この作品が圧倒的に一番好きだと思った(他のももちろん素晴らしいのだけど)。男性との恋愛、街の描写、人物たちの会話、人々の動き、気温、気分、様々な要素が一ページの中にたくさん盛り込まれていて、読んでいてずっとわくわくさせられる。その一つ一つがどれもないがしろにされることなく、丁寧に描かれていて、話題のずらし方もめちゃくちゃ秀逸だと思う。

めちゃくちゃすごいと思ったところを引用しておく。

《あー、と頭の上で声がして、見ると古い瓦屋根の二階にカラスがいた。屋根の縁から隣のビルの庇によじ登るように上がったその動きは、鳥というより猫ぐらいの動物に近くて妙な生々しさがあった。同じように見上げていた智佐が言った。

「カラスって、百年ぐらい生きるらしいで」

「うそ。妖怪やん、そんなん」

「ほんまやって。鳥って長生きやねんから。実家の隣のオウム、二十年ぐらい生きてるもん」

 智佐はむきになって甲高い声で主張した。カラスは庇から少し飛び上がり、電柱のてっぺんに止まった。

「だからって百年はないわ」

「いやでもほんま長生きやねんって。だから賢いんちゃうん」

 えー、と言いつつ、電柱のてっぺんで動かないカラスをまた見上げた。百年とまではいかなくても、五十年あのカラスが生きているとしたら、わたしが探している風景を知っていることになる。あの黒い目で、焼け跡だったこの街にどんどん建物が建ってたくさんの人がやってきて店を作ったり潰したりしてきたのを、ずっと見てきたことになる。しかも、あの空中写真みたいに上空から。そうだとしたら、見てきた景色をわたしに教えてほしかった。わたしが探しているものが、目の前にいるあの黒い鳥の黒い眼の中にあるかもしれない。すぐ近くにいるのに、なんで手が届かへんのやろう。カラスは、電柱の上からこっちを見ていた。その目で今、わたしを見下ろしていると思ったら、カラスは大きな羽を持ち上げるように飛び立ち、黒い影になって白い空を横切っていった。》

関係ないけど、本を読み終わって立ち上がると、半端ではない立ちくらみがして、そのまま膝から崩れ落ちて、数秒間そのままになっていた。

 

今日は五日くらい前からずっと行きたいと思っていた温泉に行ってきた。

(書いてから日記を見返すと、前に温泉に行ったのが19日だったから、行ったその日からまたすぐ行きたいと思っていたことになる。実際そうだけど。)

炭酸風呂での半身浴。絶えず振動し続ける水面の模様が反射して、天井の電球の周りに、不思議な模様を作り続ける。見ているとだんだんと、天井自体が歪んでいるように見えてくる。

温泉のなかでも、辛いと気持ちいいが不思議に同居しているサウナと水風呂はやっぱり特別。サウナでひたすら、限界まで我慢して、水風呂でかけ湯してめちゃくちゃ冷たくてそれも我慢して入って、最終的にすごい快感が訪れる。まず最初に肺のなかが冷たくなって、その次肺で冷やされた空気が喉を通ることで、喉のあたりも冷たくなってきて、頭は徐々にガンガンしてくる。足の指先が一番先に限界を迎えるのは、ぼくが末端冷え性だからかもしれない。全体としては気持ちいいから、やっぱり何度も入ってしまう。その水風呂は、たくさん氷がつまった容器に水が通過して、冷えた水が絶えず供給される仕組みになっていた。

帰りは少しだけ雨が降っていた。

 

今日、はじめてローリング・ストーンズのアルバムを通して聴いてみた。めちゃくちゃイイな…すごい…特に、『Let It Breed』が全曲好き、の勢い。いいなあ…!!

f:id:moko0908:20200924221942j:image
f:id:moko0908:20200924221939j:image