2022 8〜11月

 日記を書こうと思えるくらいに最近はメンタルが安定している。今年の3月から横浜に引っ越してきて、新しい環境に早く慣れるのを待っていたらもう年が変わりそう、という感じだ。散々だった今年とは少しでも早くお別れしたく、来年に期待という気持ちでしいたけ占いを読んだ。乙女座。この星座と昔は嫌だった性別のはっきりしないすこし珍しい名前を今では親しく感じていて、わたしを形成するのにいくらか関わってきたんだと思う。

 

 ストレスの最大の原因だったカラオケのバイトは、かなり酷い終わりかただったけど、だいぶ前にやめることができた。今までずっとバイトは塾関係で接客業ははじめてだった。髪型が自由だったから、カラオケを選んだ。働き始めると、普段の生活ではおっちょこちょいや天然とかで済んでいた自分の性質が、職場においていかに他人に迷惑をかけ、イライラさせるかが身に染みてわかった。最後のバイトの日、いつものように店長に怒られていると突然、「もっとしっかりしないとさ〜、キミ、男なんだよ」という言葉が嘲笑とともに飛んできて、一瞬なんで急に性別のことが持ち出されるのかわからなくて気が動転した。ただ、すぐにその意味はなんとなく理解できて、ぼくはこのときも今も髪が長くて、髪を結んで仕事をしていた。おまけに身体は細くて小柄。たぶん、店長はぼくが普段から「男」に居心地悪さを感じていることを理解した上で、その言葉を吐いたのだと思う。そこには明確に攻撃的な意図があった。店長の一線超えた発言に腹を立てたぼくは、その日のうちに辞めようと挨拶もせずに店を出て行ていくと、店長に追いかけられた。なんとか逃げ切って、バイトは辞めたけど、靴を取られた。これが、バイトを辞めるまでの経緯。

 

 今年は、仕事の出来なさや、日常生活での色々な困難に悩んで初めて心療内科へ行った。発達障害の症状改善に出されるストラテラを処方されてしばらく飲んでいた。けど、飲んでも何も変わらないので結局やめてしまった。家出るたびに鍵を探したり、やっと見つかったと思ったら財布を忘れていたり、図書館で利用者カードを発行して、館内から出てないうちに無くしていたり。薬さえ飲めばこういうことが全部無くなるんだと期待してたけど、そんな夢みたいなことはなかった。無事に生きていくためには、そういう幻想を一つ一つ修正していく作業が必要なんだろうと思う。ささいな上手くいかなさが立て続けに起きると、やっぱりぐったりして生きるのが辛くなるけど、どうしようもないことが本当にどうしようもないんだと諦められたら、すこし楽になれる気がする。

 

 結局、日記として書こうと思っていたところまではたどり着かず、日記を書いていないあいだの大きな出来事についてだけ書いた。

 

2022-5-15

日記を継続して書くのはすごくしんどい。けどしばらく書かないでいると、書きたいと思ったことがそれなりに溜まってきて、その多くを忘れていると思うけど、また書き始めることが出来ている。身体的な性が男性かつ長髪だと、バイトの種類がとても制限される。だけど、この前ベリーショートのウィッグをかぶって行けばいいんじゃないかと思い付いた。バイトの時は男装。

週末は写真を撮りに出掛けていた。土曜は家周辺。カメラだけ持ってうろついていたら、いつの間にかすごく遠くの方まで来てしまっていた。住んでいる場所周辺はとてつもなく入り組んでいるうえに、高低差の激しい地形だ。携帯も持たずに出てしまったから、マップも見れず、昼に出たのに家に着けたのは日が沈む頃だった。坂を登ったり降ったり、すごく疲れた。

今日は電車に乗って多摩川で降りた。多摩川台公園を歩く。日曜だからか、家族連れがとても多かった。ああいうふうになる可能性が低い光景を見続けて、すこし不思議な気分になる。かつて自分もあそこにいたけど、これからはたぶん関係のない世界。公園を出てからは、多摩川堤通りを歩き続けた。海まで15kmという看板。歩いていたらそのうちどこかに辿り着くだろうという甘い見通しでいたが、あまりにもずっと一直線が続くのでたまらずバスに乗った。一度に歩ける距離には限界があることは、歩き疲れるまではいつも忘れられている。昨日、迷ったせいで限界を超えて歩き続けたばかりなのに。後ろで、男の子が母親に無視されながらもずっと同じ言葉を繰り返している。

「ぼく8階にすんでる!ぼく8階にすんでる!ぼく8階にすんでる!ねえ聞いて〜!ぼく8階にすんでる」

「待っていま話してるから」

「ううん、東京だと珍しくないわそんなの」

ケンタッキーで休憩した後、いつもどおり、気楽に考えていたよりもずっと少ない量の写真しか撮れずにさっさと帰ってしまった。

今日はこれでおわり。