3月19日

 快晴。窓を閉めるとき指挟んでちょー痛い。拷問の、指を金槌で打つシーン。指には末梢神経が集まっている。ありゃ痛いわ。バイトだった。最近は昼頃に起きてるから起きたらすぐバイトだ。祇園四条から河原町に乗り換える。後ろで男が女に「二浪の浪ってどういう意味かわかる?まあ、現代で言うニートみないなもんよ。実際俺は浪人のときニートみたいな生活送ってた。でも実はもう一つ意味があんねん。それは二つの波って意味や。俺にとってそれは一つがコンサルティング事業で、もう一つがIT事業で…」と、クソつまんない話をでかい声で喋っていて、さっさと死ねばいいのにと思いながら歩いていた。

 『猫のお化けは怖くない』(武田花)、「夏休み」より。

≪ 勉強もせず、夏休みの日々を私はなにをして過ごしていたのか。大体はボーッとしていたのだが、中学から高校にかけての数年間は盆踊りに夢中になり、東京および近郊の盆踊りをはしごして回った。櫓のまわりをぐるぐると、いい気分で踊り続けるうちに、休憩時間がくる。踊りの輪が崩れた中に、ぼんやりとひとりたたずんでいると、ふいに宿題や学校のことが頭をよぎり、気持ちが沈む。しかし、ドドンガドンドドンガドン、太鼓の音と共に再び音頭が始まれば、憂鬱はたちまち吹き飛び、手足がクイックイッと動き出す。ああ、このまま踊りながら、あの月や星のずっと向こう、宿題も学校もない世界へチャンチャカチャンチャカとにぎやかに昇って行っちゃったいなあ。いい形に指を反らした両手の間から夜空を見上げ、溜息をつくのである。≫

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