『猫のお化けは怖くない』(武田花)を読み終わった。
≪ 知らない土地をうろうろしていると、ふいに何かが私を呼び止める。「ハナチャン」と、名前を呼ばれることもある。一瞬、死んだ猫のくもかと思い、天を仰ぐ。でも、猫とは声が違う。大抵、低く、ぼそぼそとした人間の男の声だ。あたりを憚るように小さく囁きかけてきたり、いやに威張りくさった口調だったり。
空耳だ幻聴だと、人は言う。私は呆けてしまったのだろうか。でも、物や景色に呼ばれて、それで写真が撮れれば、言うことはない。なにより、周りが賑やかになる。≫