12月27日

丸善へ行った。大型書店に行くのは久しぶりでとてもワクワクした。残雪の『突囲表演』を買った。読むのはしばらく先になりそうだけど楽しみ。

・授業のレポートの調べ物のために『快楽としての動物保護』(信岡朝子)という本を読んでいる。純粋に読みたい本を読んでいるのではないときって、どうしてもこちら側の問題であまり楽しい読書にはならないのだけど、この本は読んでいるうちに面白くなってきた。スーパーホエールという概念をはじめて知った。

≪スーパーホエールとは、異なる複数のクジラ類種の特徴をひとまとめにして作られた、現実には存在しない観念上のクジラである。例えば「地球上でもっとも大きい動物」という形容は、クジラ類の中ではシロナガスクジラのみに当てはまり、地球上でもっとも大きな脳を持つのはマッコウクジラ、体重に対してもっとも大きい脳の割合を示すのはハンドウイルカ、歌を歌うのはザトウクジラ、人懐っこいのはコククジラ、絶滅の危機に瀕しているのはホッキョククジラとシロナガスクジラなどとなるが、これらの異なる特徴を部分的に取り出してイメージ上で混交し、実体化させたのが、スーパーホエールである。≫

≪西洋に伝統的に存続してきたクジラ像とイルカ像の系譜を交錯させる形で生まれた「スーパーホエール」の偶像は、やがて森田勝沼の言う「メディアホエール」となって世界中に拡散していった。≫

≪森田によると、メディアホエールには、(1)クジラの知性の研究などの「科学的」な装い、(2)現代が求めるプラスの価値(知性、瞑想、非暴力、愛、平和、反経済至上主義など)、(3)映像や音声表現などのヴァーチャル・リアリティ的展開といった特徴がある。だが、これらの要素を盛り込んで作られたクジラ類のイメージは、あくまで「作り上げられた虚構」に過ぎず、実在する生物としてのクジラ類の生態や捕食関係、あるいはクジラ類と人間生活の現実的な関わりといった要素は完全に欠落している。そうして、生物としての実体から乖離したメディアホエールは、人々の想像の中だけに存在する「非現実的で非歴史的な世界」を今日に至るまで休むことなく泳ぎ続けているのである。≫

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